汗・ニオイのメカニズム

なぜ汗はニオうのか?(ニオイ発生のしくみ) なぜ汗はニオうのか?(ニオイ発生のしくみ)

Answer

アポクリン腺から出るタンパク質や脂質を含んだ汗は、無菌状態では無臭ですが、
雑菌によって分解されるとニオイが発生するからです。

汗は何のためにかくのか?

私たちの体温は、ほぼ一定に維持されています。これは体内で生産される熱の量と体外に放散される熱の量のバランスが一定に保たれているからです。
その熱を放散させるひと役を担うのが、『発汗』です。
気温が上昇したときや運動をしたときは、体温や肌表面の温度が上がります。
体温調節を担っているのは、脳の視床下部という部位で、ここで体温の上昇を感じると汗を出す指令を出し、『発汗』します。

汗はどこから出てくるのか?

汗は、脳の指令によって皮膚にある『汗腺』から体外に放出されます。この汗腺には、『エクリン腺』と『アポクリン腺』の2種類が存在します。エクリン腺から発汗する汗とアポクリン腺から発汗する汗では、含まれる成分やその役割が異なります。

エクリン腺からの発汗

エクリン腺は、全身に約300万個存在します。図1を見てもわかる通り、毛とは無関係です。特に、手のひら・足の裏に多く存在しています。
エクリン腺からの汗はほとんど水分で、さらさらとした質感、また無色・無臭です。
体温調整に関与しており、通常の汗の分泌は1日700~900ml、夏季や運動時には10ℓに及ぶこともあります。

汗はどこから出てくるのか?

アポクリン腺は、ワキの下などの特定の部分に存在し、毛穴に向けて開口しています。(右図参照)
私たちを悩ませるのが、このアポクリン腺から出るタンパク質や脂質を含んだ汗です。粘り気のある質感で、無菌状態では無臭でも、雑菌によって分解されるとニオイを発します。

ほぼ全身にあるエクリン腺と異なりアポクリン腺は、「ワキの下」「乳首」「へそ」「耳の穴の中」「陰部」「肛門」などの限られた部分に存在する汗腺。つまり体毛が密生する部分に多いということです。体毛にはニオイを周囲に拡散させるという働きがあります。

ワキガのメカニズム

ワキガとは、ワキの下から発するニオイのことで、漢字では「腋臭」と書きますが、あきらかに当て字です。この言葉は、「わきくさ」が訛ったもののようです。
その発生のメカニズムは、上記記載のメカニズムと同じですが、特にワキの下の汗によるニオイの強いものを「ワキガ」と呼んでいます。

発汗の種類

発汗は、原因によって「温熱性発汗」「精神性発汗」「味覚性発汗」などに分類されています。
「温熱性発汗」は、体温の上昇を脳が感じると発汗するもので、体温調整のための汗です。
「精神性発汗」は、ストレス下や緊張時にかく汗のことでワキの下、足の裏、手のひらなど局所的におこります。
「味覚性発汗」は、香辛料が効いた辛い物を食べたときに鼻や額などにかく汗のことで、味覚の刺激によって反射的におこるもので、食べ終わると汗もひきます。
いずれも自分の意思でコントロールすることはできません。

足のニオイはなぜ発生するのか? 足のニオイはなぜ発生するのか?

Answer

ワキとは異なり、足の裏にはアポクリン腺はほとんどありません。
しかし、汗腺が集中し、1日にコップ約1杯分の汗をかくため、
そのまま放置すると皮膚常在菌によって汗が分解され、ニオイが発生するからです。

足とワキのニオイの違い

足の裏は、ワキとは異なり、エクリン腺が大半を占めますが、以下の原因により、ニオイが発生します。

① 足の裏には汗腺が集中し、1日にコップ約1杯分の汗をかくといわれています。足にかいた汗をそのまま放置すると、皮膚常在菌によって分解され、ニオイを発します。

② 角質層の厚い足の裏から表皮細胞が新陳代謝や摩擦などによってはがれおち、大量のアカとなります。これを栄養分にして皮膚常在菌が繁殖し、皮脂腺からの分泌物も混じってニオイが発生します。

足がニオう状況とは

足は、靴や靴下によって密閉されるので高温になり汗をかきやすく、ムレやすい状態になりがちです。湿度は女性のパンプスで84%、男性の革靴で87%、ブーツでは96%と非常にムレやすい状態です。
このように足は、雑菌が好む過酷な環境にさらされています。
さらにムレると皮膚の角質層がはがれやすくなって雑菌の栄養素がどんどん供給されてしまいます。
また、足はストレスや緊張による『精神性発汗』も影響します。「足汗やそのニオイが気になることでストレスになり、精神性発汗によってさらに足汗をかいてしまうこと」があり、これによってよりニオイやすい状況となります。

男女の汗の量・ニオいやすさに違いはあるか? 男女の汗の量・ニオいやすさに違いはあるか?

Answer

女性に比べ、男性は低い温度で汗をかき始め、発汗量も気温上昇とともに男性の方が多くなる傾向にあります。
また、ニオイを発生させる菌の餌となる皮脂の分泌量も多いことから、
男性の方が比較的ニオいやすい体質にあると言えます。

男女の発汗量の違い

男性は気温が約30℃になると温熱性発汗※が始まるのに対し、女性では温熱性発汗が始まるのは約32℃です。
気温が高くなっても、女性は男性より汗をかきにくく、気温が高くなればなるほど、男女の発汗量の差は大きくなります。

※「温熱性発汗」とは、気温の上昇や運動などで体温が上昇しすぎることを防ぐためにかく、体温調節のための汗のことです。

男女の皮脂分泌量の違い

皮脂は、汗とともに汗腺から分泌され、ニオイを発生させる菌の餌となります。
皮脂の量は、男女ともに、新生児で多く、乳児~学童では少なくなります。その後、思春期にきわめて急増し、20代で最も多くなります。
女性では、加齢に伴い減少し、男性では減少しにくいため、次第に男女の皮脂量の差は大きくなる傾向があります。

ワキ毛とニオイの関係

ニオイの元となるタンパク質や脂質を含んだ汗を出すアポクリン腺は毛根と共に存在するため、ワキ毛が濃いとアポクリン腺も多くなります。
アポクリン腺から出た汗がワキ毛に付着すると、ワキ毛に包まれて次第に濃縮されていき、その濃縮されたニオイ物質とエクリン腺から出た汗が混ざり合うと、ワキ毛を伝わってニオイを拡散してしまいます。
そのため、ワキ毛のある男性の方が比較的ニオいやすいと言えます。

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